保険会社が、なぜクルマの試乗サービスに挑むのか。東京海上日動発Carjanyに学ぶ、経営課題からの新規事業づくり

carjanyのインタビュー記事のアイキャッチ画像
  • URLをコピーしました!

保険会社が、なぜクルマの試乗サービスを立ち上げたのか。その背景には、代理店を通じた販売が中心の損害保険事業において、顧客との直接接点をどうつくるかという課題がありました。

東京海上日動からの出向起業により誕生した株式会社Carjanyは、ショッピングモールを拠点に、複数メーカーのクルマを気兼ねなく乗り比べられるサービスを展開しています。ユーザーのクルマ選びを支えながら、ディーラーの試乗対応の効率化にも取り組み、創業から約2年で関東・関西の40拠点へと広がりました。

しかし、実証実験の過程では、利用者が増えるだけでは事業が成立しないという壁にも直面しました。誰に使ってもらい、ディーラーにどのような価値を届けるのか。

今回は、新規事業Talksが日本新規事業大賞のメディアスポンサーとして、代表取締役の渡邊裕太氏に取材しました。

既存事業との関係を踏まえた事業の設計から、約1年半にわたる仮説検証、拡大に伴う組織の課題まで、事業を形にするために重ねてきた判断を伺いました。


【プロフィール】

carjany代表の渡邊氏のプロフィール画像

株式会社Carjany
代表取締役
渡邊 裕太 氏

2007年、東京海上日動火災保険株式会社に入社。国内外で自動車メーカーやディーラーに関わる業務に従事し、中国には7年間駐在。自動車産業を担当する本部の企画部門で、既存のビジネスモデルを見直す中長期戦略に携わる。2024年2月、出向起業モデルを活用して株式会社Carjanyを創業。代表取締役として、ショッピングモールを拠点に複数ブランドのクルマを乗り比べられるサービスを展開する。ユーザーの購入支援とディーラーの業務効率化を通じて、自動車の購入・販売プロセスの変革を目指している。


第1章 | 保険会社が顧客とつながるために、なぜ「クルマの試乗サービス」だったのか

──まず、Carjanyがどのような事業を展開しているのか教えてください。

渡邊:ショッピングモールを拠点に、複数メーカーのクルマを乗り比べられるサービスを提供しています。お客様はディーラーからの営業を受けずに、自分の生活に合うクルマをじっくり検討できます。

ディーラーに対しては、試乗対応を代行し、購入意向が高まったお客様をご紹介します。お客様からはサービスの利用料を、ディーラーからは月額の業務委託料をいただく仕組みです。

クルマを購入するお客様の比較検討と、販売するディーラーの業務効率化。その両方を支えることで、クルマ選びをより楽しく、スマートにしていきたいと考えています。

ユーザーの購入支援とディーラーの販売支援を組み合わせた、Carjanyのビジネスモデル。
ユーザーの購入支援とディーラーの販売支援を組み合わせた、Carjanyのビジネスモデル。

──東京海上日動から、こうした事業が生まれた背景を教えてください。

渡邊:出発点にあったのは、損害保険業における顧客接点の課題です。2020年ごろ、私は東京海上日動の自動車産業を担当する本部の企画部門で、既存のビジネスモデルを見直す中長期戦略を考えていました。

自動車保険は、ディーラーなどの代理店を通じて販売しています。クルマを購入するタイミングで保険をご案内できる一方、お客様との接点は代理店側にあり、保険会社自身が直接つながりにくい構造があります。

その構造を変えるには、保険だけを扱っていても難しい。クルマを選び、購入するプロセスに、私たち自身が入っていく必要があると考えました。その打ち手の一つが新規事業だったのです。構想を始めたのは、全社的に新規事業を推進する動きが本格化する前でした。

──顧客との接点をつくる方法として、なぜ試乗に着目したのでしょうか。

渡邊:大前提として、ディーラーは私たちの既存事業を支える大切なパートナーです。新しい事業によってディーラーとの関係を損ねてしまっては、既存事業に大きな影響が出ます。お客様の課題と、ディーラーの課題が重なる領域を探す必要がありました。

試乗について、お客様には、複数メーカーのクルマを比べたいけれど、店舗を回るのは大変だし、営業スタッフにも気を遣うという悩みがあります。

一方、ディーラーも、人手の確保が難しくなる中で、説明すべき商品やサービスは増えています。試乗にはスタッフの時間がかかりますが、対応したすべてのお客様が購入するわけではありません。業務効率を改善したいという課題があるのです。

私は国内や中国で、長く自動車メーカーやディーラーに関わってきました。業界に近い第三者として見てきたからこそ、こうした課題を具体的に捉えられたと思います。

双方が負担を感じている試乗業務を、外部でまとめて担う。その仕組みをつくることで、ユーザーとディーラーに価値を提供しながら、私たちもクルマ選びの段階からお客様とつながれると考えました。

1 2 3 4 5 6
carjanyのインタビュー記事のアイキャッチ画像

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!