保険会社が、なぜクルマの試乗サービスに挑むのか。東京海上日動発Carjanyに学ぶ、経営課題からの新規事業づくり

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第3章 | 利用者が増えても成立しない。「買いたい人」に使ってもらうまで

──実証実験で特に大きな壁になったのは、どのようなことでしたか。

渡邊:利用者自体は、実証実験を始めて数日でつきました。ただ、ディーラーからクルマを預かり、対価をいただける状態をつくるまでが大変でした。

私たちのサービスは、安価なレンタカーとしても使えてしまうリスクがあります。実証実験では、多いときに利用者の6割ほどがレンタカー目的でした。

ディーラーがクルマを預けるのは、購入を検討しているお客様の紹介を期待しているからです。利用者が増えても、購入につながるお客様をご紹介できなければ、お金を払っていただく理由にはなりません。利用者を獲得してから、ディーラーにも価値を感じていただける状態にするまでに、さまざまな工夫が必要でした。

──購入を検討している方に使ってもらうために、何から取り組んだのでしょうか。

渡邊:まず、お客様がどうやってクルマを選んでいるのかを知ることです。実証当時、私は少なくとも500人のお客様と話しました。

そこで見えてきたのが、私たちのターゲットに共通する購買行動です。クルマを買い替えたいけれど、ディーラーに行くと営業を受ける。そこで、まずYouTubeの試乗動画を見て、疑似体験をしている方が多かったのです。

それなら、そのタイミングで私たちのサービスを知っていただくのがよいと考えました。試乗レビューを発信するYouTuberとコラボレーションし、動画で紹介していただいたところ、利用者が大きく増えました。お客様の行動をたどることで、サービスを届けるべき場所が見えてきたのです。

実証で500人以上の顧客と対話し、購買行動や利用目的を確かめた渡邊氏。
実証で500人以上の顧客と対話し、購買行動や利用目的を確かめた渡邊氏。

──レンタカー目的の利用を減らすためには、どのような工夫をしたのでしょうか。

渡邊:実証実験をした2拠点を比べると、駅に近い拠点の方が、レンタカー目的の利用が多かったのです。お客様と話すうちに、自分のクルマを持っていない方が、移動手段として使っていることが分かってきました。

そこで、拠点は駅から離れた場所を選ぶようにしました。私たちが主に届けたいのは、すでにクルマを持っていて、買い替えを検討している方です。その方たちは自分のクルマで来られるので、駅からの近さはそれほど重要ではありません。

料金の仕組みも工夫しました。ご自身の自動車保険を利用できる方と、別途保険の手配が必要な方で、利用時の負担が変わる設計です。

立地と料金の両面を調整することで、クルマの買い替えを検討している方が中心になっていきました。誰に使っていただくかによって、ディーラーにご紹介できるお客様の数も変わってきます。

──ディーラーには、どのような価値を示せるようになったのでしょうか。

渡邊:ご紹介したお客様についてディーラーに話を聞くと、商談にかかる時間が短いという反応がありました。

Carjanyを利用した方は、すでに複数のクルマを比較して、候補を絞っています。私たちの側でも、ディーラーでの勤務経験があるスタッフが、見積もりなどをご案内しています。そのため、ディーラーでは購入に向けた具体的な相談から入りやすいのです。

紹介できるお客様の数に加えて、商談の時間を短縮できることも価値として伝えていきました。お客様とディーラーの両方に話を聞き、サービスを調整し続けることで、クルマを預け、業務を任せていただける理由をつくっていったのです。

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carjanyのインタビュー記事のアイキャッチ画像

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