保険会社が、なぜクルマの試乗サービスに挑むのか。東京海上日動発Carjanyに学ぶ、経営課題からの新規事業づくり
第4章 | 都心でも地方でもなかった。実証実験で見つけた、広げるべき市場
──埼玉で見えてきた事業の可能性は、ほかの地域でも再現できたのでしょうか。
渡邊:事業化に向けた議論では、埼玉で成り立っても、ほかの地域で同じように成り立つのかと問われました。そこで、都市郊外型の埼玉に加え、都心型の東京都内、地方型の山梨でも実証実験をしました。
結果として、私たちのサービスが最も合っていたのは、都市郊外型のエリアでした。
都心では、そもそもクルマを持たなくても生活できるため、購入に向けた試乗よりも、レンタカーとしての利用が多くなりました。一方、山梨での実証実験では、ディーラーに行って試乗することへの抵抗が少なく、お金を払って乗り比べる必要性を感じていただきにくかったのです。
クルマが必要な地域であれば、どこでも同じ需要があるわけではない。その違いは、実際にやってみたことで分かりました。

──都市郊外では、どのような方にサービスが合っていたのでしょうか。
渡邊:主なターゲットは、すでにクルマを持ち、買い替えを検討している30〜40代の子育て世帯です。日々忙しく、クルマは比較して選びたいけれど、何店舗も回って営業を受けるのは負担に感じる。そうした方に使っていただきたいと考えています。
エリアとして目安にしているのは、都心から15〜50キロほどの範囲です。人口が多く、クルマが生活に必要な都市郊外に、私たちのターゲットが多く暮らしています。
クルマを持っていない若い方に、初めてのクルマ選びで使っていただく可能性もあります。ただ、そこまで広く集客すると、レンタカー目的の利用も増えやすくなります。事業を成立させるうえでは、まず相性のよい層に集中することが大切だと考えました。
──展開する地域を絞ったことは、社内での事業化の判断にもつながったのでしょうか。
渡邊:どこで成り立ち、どこでは難しいのかを説明できるようになったことは大きかったと思います。
都市郊外で成り立つのであれば、次に同じ条件の市場はどこにあるのか。関西や名古屋など、広げていく候補と順番が見えてきます。
一つの地域で収支が成り立つことに加えて、そのモデルをどのような地域に展開できるかを示す。そこまで具体的に説明したことで、事業を広げていく道筋を理解してもらえました。実証実験は、需要を確かめると同時に、私たちが集中すべき市場を見極めるためのものでもあったのです。
