全国約5,400施設で培った安心とおいしさを、家庭の夕食へ。日清医療食品「おむかえデリ」が保育園に見つけた事業機会

共働き世帯にとって、保育園のお迎えから夕食までの時間は、一日の中でも特に慌ただしい時間です。子どもを連れてスーパーに立ち寄り、献立を考え、帰宅後に調理する。宅配食を利用する場合も、受け取りのために自宅で待たなければならないことがあります。
こうした夕方の負担を、生活動線を変えずに軽減しようとしているのが、日清医療食品株式会社のおむかえデリです。保護者が子どもを迎えに来るタイミングで、保育園に設置された冷凍庫から夕食のおかずを受け取れる仕組みを構築。買い物や調理にかかる時間を、家族と過ごす時間や保護者自身の休息に変えることを目指しています。
新規事業Talksは、第三回 日本新規事業大賞のメディアスポンサーとして、最終選考会のファイナリストへの取材を行っています。今回は、同賞で審査員特別賞およびパートナー賞を受賞した、おむかえデリを取り上げます。
全国約5,400施設への給食提供網や、約8万人の園児の食嗜好データを持つ日清医療食品は、なぜ今、家庭向けの夕食サービスへ参入するのでしょうか。本記事では、おむかえデリの着想から社内での事業化、各地での実証実験を通じて見えてきたニーズ、価格や予約、受け取り方法をめぐる試行錯誤、2027年4月の本格展開に向けた構想までを紐解きます。
【プロフィール】

日清医療食品株式会社
経営企画室
未来構想担当
髙木 麻衣 氏
新卒入社後、東京支店の管理部門で病院や介護福祉施設の給食受託業務の運営・人員管理を経験。2024年に経営企画室へ異動し、新規事業開発に携わる。保育園のお迎え時に夕食を受け取れる「おむかえデリ」を発案し、各地での実証実験から事業化までを推進。第三回 日本新規事業大賞では、審査員特別賞およびパートナー賞を受賞した。
第1章|忙しい夕方に、家族で過ごすゆとりを。おむかえデリの原点

──まず、おむかえデリの概要を教えてください。
髙木:おむかえデリは、保育園へ子どもを迎えに来たタイミングで、夕食のおかずを受け取れるサービスです。
園から配布されたチラシを見た保護者が公式LINEに登録し、希望する商品を事前に予約します。お迎えの際には、園内に設置した小型の冷凍庫から商品をセルフで受け取る流れになっています。
実証実験では、火曜日と木曜日を提供日に設定しました。予約期限は前週の金曜日で、商品は3品を組み合わせた夕食用のおかずセットです。
──どのような家庭や利用場面を想定していますか。
髙木:主な対象は、保育園に子どもを通わせている共働き世帯です。来週は仕事が忙しくなりそうだと分かっているときや、夕食を作る余裕がなさそうな日に利用していただくことを想定しています。実証実験では、特定の日だけでなく、普段から継続して利用してくださる方もいらっしゃいました。
──髙木さんは、どのようなきっかけからこのサービスを考えたのでしょうか。
髙木:私はまだ子育ての当事者ではありません。きっかけになったのは、自分が子どもだった頃の経験です。
母は料理がとても上手で、毎日の食事を楽しみにしていました。一方で、夕食を準備している母はいつも余裕がなく、家の中に気まずい空気が流れることもありました。その記憶が大人になってからも残っていて、夕食を作る負担を減らせたら、親子がもっと穏やかに過ごせるのではないかと考えるようになりました。
ただ、それが自分の家庭だけの経験なのかは分かりません。そこで、子どもが2人いる知人にお願いし、保育園のお迎えから夕食まで同行させてもらいました。子どもを前後に乗せた自転車の横を走り、荷物を持ち、帰宅後は子どもの遊び相手をしながら、夕食の準備を見ていました。
帰宅してからも、手洗いを促し、夕食を作り、子どもの勉強や遊びにも対応しなければなりません。夕方の短い時間に、やるべきことが集中している現実を体感しました。そこで、これは自分の家庭だけの話ではなく、取り組むべき課題なのだという実感を持ちました。
