一人の試作から、会社の事業へ。フジ・ネクステラ・ラボが実践する、現場発の新規事業開発
第3章 | 法人への導入を広げる、社内の誰もが使いやすい仕組みと運用
──法人向けのサービスとして、どのような点を重視して設計したのでしょうか。
玉岩:実際に利用する方、導入企業の管理者、サービスを提供する私たちまで含めて、関係する全体の負担を減らすことを重視しました。
例えば、利用者ごとにアカウントを作る仕組みでは、入社や異動、退職のたびに管理が必要になります。パスワードに関する問い合わせなども含め、情報システム部門の負担になります。また、一人当たりいくらという料金体系では、全社に広げようとしたときに費用が増え、利用者を絞らなければならないこともあります。
そこで、「もじセレブ」では企業のメールドメインで利用者を制限しながら、個人ごとのアカウント作成を不要にしました。料金も、全社で利用しやすい定額制を基本としています。これなら予算を立てやすく、利用量に応じた毎月の請求額の確認や、提供側の請求業務も簡素化できます。
利用者の作業が便利になっても、その裏で管理者や提供側の仕事が増えてしまえば、全体として効率化できたとは言い難いです。誰かに負担を移すことになっていないかは、常に意識していました。
もちろん、会議や取材の音声には機密情報が含まれます。データの取り扱いや保存期間、お客様のデータをAIの学習に利用しないことなども明確にしています。こうした情報を明確にすることで、機密性の高い情報を扱う場面でも安心して利用でき、社内のセキュリティ審査や導入判断も進めやすくなります。

──初期の顧客には、どのように価値を確かめてもらい、導入につなげていったのですか。
玉岩:まず、一定期間の無料トライアルで、お客様自身の音声を使って実際に試していただくことを重視しました。文字起こしの精度が高いと説明しても、言葉だけでは違いが伝わりにくいからです。
自分たちが内容をよく知っている音声であれば、どれくらい正確に文字になっているか、必要な論点がきちんと整理されているかを判断できます。実際の結果を見ていただくことで、仕事に使えるかどうかを具体的に確かめてもらえます。
その一方で、機能を評価していただいても、それだけで導入が決まるわけではありません。情報がどこに送られるのか、誰が利用できるのか、アカウントをどう管理するのかなど、企業ごとに確認したいことがあります。
トライアルで出てきた課題や懸念を一つずつ解消し、その実績を次のお客様への説明にも生かしていきました。実際に使っていただいた結果があるので、営業担当者も自信を持って説明できます。そうした積み重ねによって、着実に導入が広がっていきました。
