大企業の新規事業担当者は、どう立ち上がるべきか。大東建託・遠藤氏が語る「180案・1300枚・300社」が生んだ事業開発論
第二章 | ダブルミッションでは0→1はできない。CVCという手法を選んだ理由

──会社の判断軸が見えてきた後、事業を形にする手法はどのように考えられたのでしょうか。
遠藤氏:当時この領域で新規事業をやるというテーマは決まっておらず、新規事業で大きな柱をつくろうという、とても抽象度の高い状態だったんです。
だからこそ僕は、大企業で新規事業をやる理由は、その会社が持つアセットを活かせることだと考えていました。
スタートアップの方がスピードも速く、小回りも利きます。そう考えると、大企業が新規事業に取り組む意味は、その会社にしかない強みや資産を活かせることにあります。
そのため、自分たちだけでゼロから事業をつくるのではなく、その会社のアセットを最大限活かせる手法を選ぶことを意識していました。
──その中で、なぜCVCという手法を選ばれたのでしょうか。
遠藤氏:新規事業には、自分たちで0→1をやる方法もあれば、CVCでスタートアップと協業する方法、M&A、社内ビジネスコンテストなど、さまざまな手法があります。
当時の僕は、新規事業を考えることに加えて、社内ビジネスコンテストの運営も担当していました。
そう考えると、現実的に半人月で0→1の新規事業を立ち上げるのは難しいと思ったんです。
スタートアップの経営者の方がフルコミットしても、事業が立ち上がるかどうかという世界です。その状況で、限られた時間の中でゼロから事業を立ち上げるよりも、自分が持っているリソースの中で成果を出せる手法を選ぶべきだと考えました。
会社には資金がありますし、業界でのポジションや50年を超える会社の歩みによって確立された強力なアセットもあります。そうした大企業ならではの強みを活かし、スタートアップと協業しながら事業をつくる方が、自分たちにとって最も合理的な選択肢だと思いました。
また、社内にはすでにM&Aを専門に担当するチームがありました。一方で、僕自身はファイナンス側の出身ではなく、一貫して事業開発に携わってきた人間です。
だからこそ、スタートアップと大企業、それぞれの強みを理解しながら両者をつなぐ役割こそ、自分の強みを最も活かせる仕事だと考え、CVCという手法を選びました。
──現在のCVCの形になるまでには、どのような経緯があったのでしょうか。
遠藤氏:実は、最初から今の形を考えていたわけではありません。
当初は、数多くの協業事業を作りたいという考えからファンドを立ち上げることを提案しようと考えていました。ただ、会社として何を成果として得たいのか、その方向性に最適な形は何かを第三者視点で捉え直した結果、一般的なファンド組成型のCVCではない座組が当社には最適なのではないかという結論に至りました。
投資そのものを目的にするのではなく、事業協業を実現するために必要な出資であれば会社としても意味がある。そう整理したことで、現在のようなスタートアップとの協業を前提とした取り組みにつながっていきました。
僕の中では、CVCを立ち上げること自体が目的だったわけではありません。
あくまで目的は、新しい事業を生み出すことです。その目的を実現するために最も適した形が、現在のCVCだったという感覚です。
