なぜHondaは、新規事業を“社内に閉じない”のか。IGNITIONに学ぶ、個人の熱量を事業に変える制度設計
第4章|IGNITIONから生まれた4社。起案者に共通する「社会をより良くしたい」夢の実現に向けた姿勢
――これまでIGNITIONから4社が生まれています。それぞれ、どのような事業なのでしょうか。
程塚 氏:これまでに生まれたのは、Ashirase、ストリーモ、UMIAILE、PathAheadの4社です。事業領域はそれぞれ異なります。
Ashiraseは、視覚障がい者の歩行をサポートするシューズイン型のナビゲーションシステムを提供しています。提案者の原体験を起点に始まった事業です。
ストリーモは、電動の立ち乗り三輪マイクロモビリティ「Striemo」を開発しています。当時広がり始めていたキックボードの安定性という課題を、自分の技術力で解決できるのではないかというところから始まりました。
UMIAILEは、海上ドローンを使った海洋観測サービスを提供する会社です。Hondaの中で技術開発をしていましたが、「Hondaの中ではやらない」という判断になり、開発が止まりました。それでも提案者が「自分でこれをビジネスにしたい」と考え、IGNITIONにエントリーしました。
PathAheadは、砂漠の砂を材料に、アフリカの道路舗装に使う骨材をつくる研究開発型のスタートアップです。Hondaの戦略には乗りにくいテーマだったため、「Hondaの中でできないのであれば、自分で事業を立ち上げたい」という思いからIGNITIONにエントリーしました。
――出発点はかなり違いますね。事業化まで進んだ起案者には、どんな共通点がありますか。
程塚 氏:原体験から始まった人、自分の技術力を起点にした人、Hondaではできないから外でやりたいと考えた人と、出発点はそれぞれ違います。ただ、共通するのは「ハードシングス」に対するストレス耐性といいますか、「社会をより良くしたい」という夢の実現に向けた姿勢です。
新規事業をやれば横槍が入ったり、思いどおりにいかないこともあります。それでも「私はこの世界を作りたい」という確固たる夢がある。そして周囲を巻き込む求心力と、価値を広げていく遠心力を持っている。共通項としては、「人」の部分が大きいと感じます。

――そうした挑戦者が毎年出てくる背景には、Hondaの文化もあるのでしょうか。
程塚 氏:毎年の公募では、再挑戦する人だけでなく、初めてエントリーする人もいて、新しい層が半分以上入ってきます。我々が積極的に社内で起案者を探しているわけではないのですが、それでも毎年新しい挑戦者が出てくるのは、Hondaの企業文化に根ざしている部分が大きいと思っています。
Hondaは、いろいろなことにチャレンジさせてくれる会社です。何かをやりたい時には上司に相談することもありますが、結局問われるのは「あなたは何をやりたいのですか」ということ。「これをやりたい」と言い続けていると、実際に挑戦できるような文化があります。
そうした強い思いを持つ人たちが社内にいるからこそ、IGNITIONにも継続的に新しい挑戦者が集まってくるのだと思います。
