JTBのイノベーション創発プログラムnextenderは、どのように生まれ、進化してきたのか

旅行業界大手のJTBは、2023年、イノベーション創発プログラムnextenderを立ち上げました。
その大きな契機となったのが、コロナ禍です。旅行需要が大幅に落ち込むなか、JTBでは旅行以外の新たな事業を生み出す必要性が、これまで以上に強く認識されるようになりました。
もっとも、JTBには以前から、社員のアイデアを事業につなげる取り組みがありました。社内アイデアコンテストJUMPは2017年から続いています。しかし、アイデアを募り、磨くだけでは、継続的に事業を生み出す仕組みにはなりません。
そこでJTBは、アイデア創出だけでなく、人財育成や風土醸成までを一体的に進めるnextenderを構築しました。その取り組みが評価され、2026年6月に開催されたビジコンAWARDS 2026では、nextenderの中核を担うJUMPが最優秀賞を受賞しています。
JTBは、どのように全社的なイノベーション創発プログラムを設計し、浸透させていったのでしょうか。
立ち上げの背景や社内の巻き込み方、JUMPの制度設計、そして今後目指す姿について、運営メンバーに伺いました。
※JTBでは、人財を単なる資源ではなく、かけがえのない財(たから)と捉えているため、本記事では人財と表記を統一しています。
【プロフィール】

グループ本社 人事・人財開発チーム
人事・人財開発担当マネージャー(nextender担当)
渡邊 健介 氏
2007年に株式会社JTB首都圏(当時の名称)に入社。一般企業やスポーツ関係の法人営業を15年間担当、国内海外の団体旅行やインナーイベント、研修の提案等を実施。その後、営業開発プロデューサーとしてソリューション開発や営業推進を担い、2025年イノベーション戦略推進チームに着任、nextenderにおけるイノベーション文化醸成を担当。現在は、人事・人財開発チームにてイノベーション文化醸成、カルチャー改革に向けた施策を企画、実行中。

グループ本社 人事・人財開発チーム グループリーダー(nextender担当)
瓜生 駿介 氏
2014年に株式会社JTB西日本(当時の名称)入社。法人営業大阪支店~大阪第一事業部にて一般法人営業を中心に旅行営業ならびにMICE営業を担当。2026年2月より、イノベーション戦略推進チームに着任、その後4月から人事・人財開発チーム(nextender担当)として、人材育成プログラムの企画・運営を実行中。

グループ本社 人事・人財開発チーム グループリーダー(nextender担当)
須谷 健太郎 氏
2010年に株式会社JTB西日本(当時の名称)入社。奈良支店で教育旅行を中心に、中学・高校・大学向けの修学旅行、部活動、留学など学校行事全般を担当。
2023年より、イノベーション戦略推進チームでイノベーション創発プログラム「nextender」に携わり、主に人財育成プログラム設計に従事。
現在は人事・人財開発チームにて主にイノベーション人財の育成・活躍サイクル創出に向けた活動を推進。

グループ本社 イノベーション戦略推進チーム グループリーダー
谷戸 雅 氏
2011年にJTBワールドバケーションに入社。2018年にJTBへ転籍し法人営業にて新たなマーケティングに着手。HP等の改修によりオペレーションの最適化を実行。2025年2月より、イノベーション戦略推進チームに着任しアイデアコンペティションJUMPの設計や伴走を行っている。
第1章|旅行だけでは立ち行かなくなる。コロナ禍で現実になった経営課題
──まず、JTBがnextenderを立ち上げた背景を教えてください。
渡邊 氏:JTBは長年、旅行事業を中心に成長してきました。一方で、旅行事業は社会情勢の変化によって業績が大きく左右されます。また、個人旅行の領域では、店頭での販売からOTAをはじめとするオンライン販売へと市場が移り変わり、従来のやり方だけでは成長を続けることが難しくなっていました。
こうした課題は以前から社内でも認識されており、旅行以外の事業を育てる必要があるという話は何度も出ていました。しかし、必要性を感じていても、具体的な解決策を形にするところまでは、なかなか進められていませんでした。
その状況を大きく変えたのが、コロナ禍です。人の移動が制限され、旅行需要が急激に落ち込むなかで、私たち自身が非常に厳しい状況を経験しました。旅行事業に依存するリスクが、これまで以上に明確になったのです。
──コロナ禍で高まった危機感を、どのように具体的な取り組みへ変えていったのでしょうか。
渡邊 氏:このままではいけないと話しているだけでは、何も変わりません。旅行以外の新たな収益の柱をつくるために、社員が新しい事業を考え、実現できる環境を会社として整えていく必要がありました。
それまでも、社内では新しいアイデアを募る取り組みが行われていました。しかし、個別のアイデアを募る取り組みだけではなく、会社として継続的に新しい挑戦を生み出し、アイデアを事業に昇華させていく基盤をつくる必要があります。そこで2023年、イノベーション戦略推進チームの発足とともに、nextenderを立ち上げました。
