勘と経験の陸上養殖を、再現可能な産業へ。収益モデルの完成前に走り出した株式会社Niterra AQUAの挑戦
第5章|収益モデルの完成を待たず、株式会社Niterra AQUAとして走り出す
──株式会社Niterra AQUAは、収益モデルが完成する前の段階で設立されています。なぜ、早期に会社として走り出したのでしょうか。
長原氏:一般的には、社内で事業モデルを検証し、一定の収益性や成長性が見えてから子会社化することが多いと思います。しかし、私たちは陸上養殖に対してNiterraがどのように貢献できるのかを、まだ模索している段階で会社として外に出ました。
陸上養殖事業を成立させるためには、設備を開発するだけでなく、実際にエビを育て、販売し、市場の反応を確かめる必要があります。一方、日本特殊陶業はセラミックスや自動車部品を中心とする製造業です。海産物の販売など、既存事業とは異なる活動を本体の仕組みのなかで進めるには、さまざまな調整が必要でした。
事業モデルが固まるまで社内で検討を続けるよりも、株式会社Niterra AQUAという別法人で市場に出て、試行錯誤を重ねた方が早いと判断しました。

──会社になったことで、事業の進め方はどのように変わりましたか。
長原氏:意思決定と実行のスピードは大きく変わりました。養殖設備を開発するだけでなく、ECサイトを開設してエビを販売したり、飲食店や卸売事業者と販路を開拓したりと、必要な検証にすぐ取り組めるようになりました。
一方で、日本特殊陶業が持つ技術や信用力、ネットワークも活用しています。初めてお会いする企業にも安心して話を聞いていただきやすく、他社との技術連携も進めやすいと感じています。日本特殊陶業の強みと、事業会社としての機動力を組み合わせながら事業を進めています。
──早期に会社として走り出したからこその難しさもありますか。
長原氏:事業の方向性が短期間で変化するため、以前に描いた事業計画と、次に説明する内容が大きく変わることがあります。その都度、日本特殊陶業と現在地や今後の方針を共有し、投資の考え方をすり合わせる必要があります。
株式会社として資金を適切に使いながら、大企業の子会社として求められるガバナンスにも対応しなければなりません。スピードと管理のバランスを取る難しさはあります。
それでも、日本特殊陶業が私たちの挑戦を必要なものとして受け止め、変化を前提に対話を続けてくれていることは、大きな支えになっています。
