JTBのイノベーション創発プログラムnextenderは、どのように生まれ、進化してきたのか
第6章|nextenderがなくなることが理想。人事との連携で目指す次の姿
──2026年4月から、nextenderの運営体制が変わったと伺いました。
須谷 氏:2026年4月から、nextender全体の企画や運営を担うメンバーの一部が、人事人財開発部門へ移りました。JUMPは引き続きイノベーション戦略推進部門が中心となって運営し、nextender全体としては、両部門をまたぐ体制になっています。
nextenderには、事業創出だけでなく、研修やコミュニティなど、人財育成に関わるプログラムも含まれています。運営を続けるなかで、人事制度や人財配置と連携しなければ解決できない課題も見えてきました。人事部門と組み合わせることで、社員の学びを実際の仕事や活躍の機会につなげ、より大きな効果を生み出せると考えています。
──人事部門との連携には、nextenderを全社へ広げる狙いもあるのでしょうか。
須谷 氏:JTBは全国47都道府県に拠点を持っています。nextenderを一部の部門や社員だけの取り組みにせず、全国へ広げるためには、人事部門が持つネットワークや仕組みを活用することが有効です。
これまでは、社員に学びや挑戦の機会を提供するための基盤を整えてきました。今後は、プログラムを通じて身につけた知識やスキルを実際の仕事で生かし、社員が新しい事業や取り組みを生み出せるところまでつなげたいと考えています。
新規事業やイノベーションは、知識を学ぶだけで身につくものではありません。自ら動き、顧客と向き合い、実践することが欠かせません。社員が行動に移すために、会社としてどのような機会や環境を用意できるのかが、これからのnextenderの課題です。
──5年後、10年後を見据えたとき、JTBをどのような会社にしていきたいと考えていますか。
須谷 氏:既存の事業領域以外で、新たな収益の柱となる事業が生まれている状態を目指しています。また、新たな事業を作って終わるのではなく、あらゆる事業・業務の中でイノベーションが常に起きて続けているのが当たり前の会社になっていたいと考えています。JTBは、旅行会社ではなく交流創造事業を担う会社であると発信してきました。将来的には、社外からも、JTBは旅行だけでなく、さまざまな事業を通じて交流を生み出している会社だと認識してもらいたいと考えています。
同時に、社員一人ひとりが、自分たちの会社はイノベーティブな会社だと自信を持って言える状態をつくりたいです。新しいことに挑戦する社員が特別な存在ではなくなり、挑戦を周囲が自然に応援できるようになれば、社員の自社肯定感も高まっていくと思います。
チームの発足当初、当時のマネージャーから、究極的にはnextenderがなくなることが理想だと言われました。専用のプログラムがなくても、社員が自ら学び、つながり、挑戦できる状態になれば、それこそがイノベーションが文化として定着した姿です。

──最後に、新規事業に取り組む他社の担当者へメッセージをお願いします。
谷戸 氏:新しい事業を一社だけで生み出すことには限界があります。新規事業だからこそ、業界や企業の枠を越えて協力できることもあります。自社だけの成果を考えるのではなく、さまざまな企業とつながりながら、日本全体を盛り上げていければと考えています。
須谷 氏:私自身、最初から新規事業やイノベーションに強い関心があったわけではありません。新しく担当になり、周囲の熱量についていけないと感じている方もいるかもしれません。しかし、関わり続けるなかで、その必要性や面白さは少しずつ見えてきます。新規事業に取り組む経験は、自分自身の成長にもつながるため、まずは楽しみながら関わってほしいです。
渡邊 氏:既存事業では、他社と競合したり、利害が対立したりすることがあります。一方、新規事業では、企業が同じ方向を向いて取り組める場面が多くあります。企業同士が協力し、時には競い合いながら、新しい価値を一緒につくっていければと思います。
瓜生 氏:新規事業に取り組むときは、制度の設計から考え始めてしまいがちです。しかし、最も大切なのは人です。挑戦する機会をどう増やすのか、挑戦する人をどう増やすのか。その視点から、必要な仕組みを考えることが重要です。
制度をつくること自体が目的ではありません。挑戦する人と、その人が一歩を踏み出せる機会を増やすこと。それが当たり前のカルチャーとして組織に根付くこと。nextenderもまた、そのための仕組みとして、これからも進化を続けていきます。
