JTBのイノベーション創発プログラムnextenderは、どのように生まれ、進化してきたのか
第3章|トップの理解だけでは進まない。関係者を一人ずつ巻き込んだ立ち上げ期
──nextenderのような全社的なプログラムを立ち上げるには、経営層の理解が欠かせません。社内の合意形成は、どのように進めたのでしょうか。
須谷 氏:nextenderを生み出したイノベーション戦略推進チームは、2023年に発足しました。チームの立ち上げを推進したのは、当時の社長や戦略責任者です。そのため、経営トップから新しい事業を生み出す必要性について、強い理解と後押しを得られていました。
ただし、経営トップが賛同しているからといって、そのまま全社に受け入れられるわけではありません。JUMPをはじめ、各事業部ではすでに新しい事業やアイデアを生み出す取り組みが行われていました。社内からは、既存の取り組みがあるなかで、なぜ新たにnextenderを立ち上げるのかという疑問も寄せられました。
──経営トップよりも、既存の取り組みを担う部門や現場への説明に時間をかけたのでしょうか。
須谷 氏:立ち上げ当初は、役職にかかわらず、既存のプログラムを推進してきた社員にも、nextenderを立ち上げる意図を丁寧に伝えています。
特にJUMPについては、以前から多くの社員が関わり、改善を重ねてきたプログラムです。それを新しい枠組みに組み込む以上、運営側だけで決めるのではなく、これまで携わってきた社員の理解を得る必要がありました。
nextenderによって既存の取り組みを否定したり、置き換えたりするわけではありません。各施策をアイデア創出、人財育成、風土醸成という一つの考え方のもとでつなぎ、より大きな効果を生み出したい。その意図を、一人ひとりに説明していきました。

──説明するなかで、反対の声もあったのでしょうか。
須谷 氏:新規事業やイノベーションそのものを否定する人は、ほとんどいなかったと思います。一方で、具体的な進め方やプログラムのあり方については、さまざまな意見がありました。
過去に新規事業へ取り組んだ経験があるからこそ、制度設計や運営方法に対して考えを持っている社員もいます。そのため、意見の違いは、必ずしも否定的な反応ではありません。新しい事業を生み出したいという共通の目的があるなかで、それぞれの経験や問題意識から生まれたものだと捉えていました。
──社内を巻き込むうえで、JTBが以前から培ってきた文化も支えになったのでしょうか。
須谷 氏:JTBには、1990年代から社員のアイデアを拾い上げ、新しい取り組みにつなげてきた歴史があります。新しいことに挑戦する社員を、最初から止めようとする文化ではありません。先輩たちが積み重ねてきた土壌があったからこそ、立場や意見の違いを越えて、nextenderを立ち上げることができたのだと思います。
