JTBのイノベーション創発プログラムnextenderは、どのように生まれ、進化してきたのか
第5章|採択して終わらせない。事業部の手挙げ制で変えたJUMP

──CHALLENGEの一つであるJUMPは、どのようなプログラムなのでしょうか。
谷戸 氏:JUMPは、社員が新規事業のアイデアを提案し、その可能性を検証するプログラムです。書類審査から最終プレゼンテーションまで、約半年をかけてコンセプトを磨き上げます。
最初に書類審査を行い、通過したアイデアは中間プレゼンテーションへ進みます。中間プレゼンテーションでは、想定する顧客が明確になっているか、顧客が抱える課題を具体的に捉えられているかを確認します。その後、最終プレゼンテーションでコンセプトとして成立しているかを審査し、次の検証に投資するかどうかを判断します。
JUMPが担うのは、事業アイデアを出すところから、コンセプトの可能性を確かめるところまでです。通過後は、最小限のプロダクトで顧客の反応を検証し、実際に販売できる形へと発展させていきます。その結果を踏まえて、本格的に事業化するかを判断します。
──JUMPでは近年、採択後の仕組みも変更したと伺いました。
谷戸 氏:以前は、最終プレゼンテーションを通過した後は、現場に戻って、自分が所属する部署・支店で事業アイデアの推進を行っていました。つまり、アイデアが評価されても、その後は現場判断でリソース配分・進行管理・判断を行っていたので、事業化に向けた動きが進みにくくなっていたのです。
そこで導入したのが、各事業本部の役員による手挙げ制です。最終プレゼンテーションに残ったアイデアに対して、自分たちの事業本部で取り組みたいと表明してもらいます。担当役員が、自部門のアセットを生かせるか、新たな事業の柱になる可能性があるかを判断し、事業化に向けたオーナーシップを持ちます。合わせて、その後の検証プロセスにかけるべき時間や予算、評価基準などを一律のガイドラインとして提供することで、事業化のスピードを落とさないこと、判断にバラつきが出ないことも意識しています。さらに、JUMP最終プレゼン後の進捗確認・共有も行うことで、起案者が孤立しない、あるいは手上げした事業本部側の悩みなども共有・支援できるようにしました。
──起案者も、アイデアとともに手を挙げた事業本部へ移るのでしょうか。
谷戸 氏:採択後すぐに所属を完全に移すのではなく、最初の約6カ月間は、起案者が業務時間の40%程度を使って検証に取り組みますが、明確に兼務の人事発令を行うことで本人および所属組織にコミットメントを高めてもらいます。検証を重ね、実際に販売を開始する段階まで進んだ場合は、原則としてその事業に100%の時間を充てる形になります。
現業に近いアイデアであれば既存の事業部門が引き継ぎ、新規性の高いアイデアであれば新規事業を開発する部門が担います。採択後の受け皿と責任の所在を明確にすることで、アイデアを事業化へつなげやすくしました。
──審査では、事業アイデアの内容以外に、どのような点を重視していますか。
谷戸 氏:市場性や顧客課題など複数の評価基準がありますが、特に重視しているのが、起案者が最後までやり切れるかどうかです。
どれほど優れたアイデアであっても、本人に強い思いがなかったり、チームが十分に機能していなかったりすれば、事業化までたどり着くことはできません。そのため、JUMP期間全体を通じて、起案者の姿勢やチームの状態を常に確認しています。起案者本人の意思や行動がブレてしまったり、チームが空中分解している場合などは、運営チームがしっかりと指導することを意識しています。
──JUMPは、ビジコンAWARDS 2026で最優秀賞を受賞しました。どのような点が評価されたと考えていますか。
谷戸 氏:アイデアコンテストだけで完結させず、教育や表彰、社内コミュニケーションなど、複数の取り組みと接続している点を評価していただいたのだと思います。
JUMPは、歴代の担当者がバトンをつなぎながら、改善を重ねてきました。事業化を重視した時期もあれば、人財育成に重点を置いた時期もあります。それぞれの担当者が試行錯誤し、次の担当者へバトンをつないできたことで、現在の形がつくられました。
今回の受賞は、現在の運営メンバーだけによる成果ではありません。長年にわたって関わってきた社員の思いや改善の積み重ねが、一つのプログラムとして評価されたものだと受け止めています。
