新規事業は、ブルーオーシャンすぎても難しい。サニックスが挑んだ市場開拓のリアル

競合が少ない市場は、新規事業にとって理想的な市場なのでしょうか。
一見すると、大きな市場があり、競合も少ない。そんなブルーオーシャンであれば、事業は順調に成長していくように思えます。しかし、実際にはそう単純ではありません。
サニックス資源開発グループが立ち上げた産業廃棄物管理DXサービス「一元くん」も、その一つでした。日本全国約430万事業所を市場と捉え、4万3,000拠点への導入を目標にスタートしたものの、実際に市場へ出て初めて見えたのは、「顧客自身が課題を認識していない」という想定外の壁でした。
それでも、1,700拠点への導入を実現し、営業組織を巻き込みながら事業を育て続けてきた千葉俊彦氏。その背景には、東日本大震災での経験や、廃棄物量に左右されない新たな事業をつくりたいという強い思いがありました。
市場があることと、市場が立ち上がることは違う。顧客の課題をどう顕在化させるのか。組織をどう動かすのか。そして、新規事業を前に進めるために本当に必要なものとは何か。
今回は、株式会社サニックス資源開発グループの千葉俊彦氏に、一元くん誕生の裏側と、市場開拓のリアルについて伺いました。
プロフィール

株式会社サニックス資源開発グループ
取締役副社長執行役員
千葉 俊彦
廃プラスチック類を埋立・焼却処理から発電燃料へ転換する業務に従事。2011年に東日本大震災後は、市町村の災害廃棄物・除染廃棄物の処理を通じて早期復興に取り組み、その経験を生かして豪雨災害時の災害廃棄物処理も担う。
2022年に排出事業者の廃棄物管理に関する課題を解決する新サービスを社内で立ち上げ、社会実装を推進。
現在は、資源循環・静脈産業分野において、廃棄物の回収から再資源化、エネルギー利用までを一体的に設計・実装する事業開発に取り組んでいる。廃プラスチック、有機汚泥、動植物性残渣などの未利用資源を対象に、フラフ燃料、SAF、堆肥化などの燃料化・資源化および新用途開発を推進している。
第1章 | 東日本大震災が、新規事業人生の始まりだった
── まず、千葉さんのこれまでのご経歴を教えてください。
千葉氏:私は中途でサニックスへ入社し、営業職としてキャリアをスタートしました。入社から1〜2年後、25歳で工場長を任され、その後、2011年の東日本大震災を機に福島の工場へ赴任しました。
福島では、震災によって発生した災害廃棄物の処理に携わりました。17年間のキャリアを振り返っても、あの経験が新しいことへ挑戦する原点になったと感じています。
── どのような経験だったのでしょうか。
千葉氏:当時、災害廃棄物の処理は会社としても初めての取り組みでした。特に、放射性物質に汚染されている可能性がある廃棄物は、過去に前例がありません。社内にもノウハウはなく、会社としても判断できる状況ではありませんでした。
やるべきか、やらないべきか。最終的には工場長だった私が責任を持って取り組む決断をしました。
── 迷いはありませんでしたか。
千葉氏:もちろん責任は感じていました。ただ、まずは行動して成果を出せば、会社も動いてくれるのではないかという思いもありました。
会社へ報告したうえで、自分たちで方法を考え、一つひとつ形にしていきました。
今振り返ると、この経験を通じて、前例がないから諦めるのではなく、自分たちで道を切り拓く姿勢が身についたのだと思います。
─ その経験が、その後の新規事業にもつながっていくのですね。
千葉氏:そう思います。
当時は新規事業を意識していたわけではありません。ただ、正解がないなかで課題を見つけ、自ら判断し、周囲を巻き込みながら形にしていく。この経験は、後に一元くんを立ち上げる際にも、そのまま生きることになりました。
振り返れば、東日本大震災での経験こそが、私の新規事業人生の始まりだったのだと思います。
