株式会社ジー・サーチ

信じる道は、検証が教えてくれた。KnockOnExploration開発チームの意思決定プロセス

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商品開発の現場では、意思決定が常に問われ続けます。
特に、新規事業やプロダクト開発の現場では、
「判断の速さ」と「判断の根拠」を同時に求められる場面が、日常的に訪れます。

この仮説は本当に正しいのか。
ユーザーは、実際にどのように使っているのか。
そして、その判断をいつまでに下すべきなのか。

株式会社ジー・サーチが展開する
セルフ動画型リサーチ「KnockOnExploration(ノックオン・エクスプロレーション、以下略KOE)」 は、
生活者の自撮り動画を起点に、短期間・低コストで“行動のファクト”を収集するリサーチサービスです。

▶ サービスサイト:
https://koe-research.g-search.jp/

本記事では、富士通の新規事業プログラム
Fujitsu Innovation Circuit(FIC)
https://global.fujitsu/ja-jp/about/activities/fujitsu-innovation-circuit

を起点に、株式会社富士通ローンチパッドでの事業検証フェーズを経て、
現在は富士通100%グループ企業・株式会社ジー・サーチで事業を推進する
KOE立ち上げメンバーのお二人にお話を伺いました。

成功談だけではなく、
2度の大きなピボット、捨てる決断、迷いながらも前に進んできた意思決定のプロセス。
新規事業に取り組む方にこそ読んでいただきたいリアルをお届けします。


蓮井 美希(はすい みき)
株式会社ジー・サーチ

富士通株式会社に入社後、金融業界向けアカウントSEとして顧客常駐も経験。
キャッシュレス潮流の中で、新規業務・新サービス開発に関わるようになり、新規事業領域への関心が高まる。
金融領域でのサービス開発がうまくいかなかった苦い経験から、「ユーザー理解の浅さ」への課題意識を強め、2022年にFujitsu Innovation Circuitへ参加。
試行錯誤の末、セルフ動画型リサーチKOEの立ち上げに至る。

齋藤 悠希(さいとう ゆうき)
株式会社ジー・サーチ

富士通株式会社に入社後、教育委員会向けICT領域(小中高のタブレット導入・活用支援)を担当。
全国の学校現場を訪れ、「実際の利用シーンを自分の目で見る」経験を積む。
その後グローバル領域にも携わり、「富士通発でグローバル展開できるSaaSが少ない」という課題意識から新規事業プログラムへ。FICを起点にKOEの立ち上げを推進。

堀井 大(ほりい ひろし)
新規事業Talks 編集長

大企業・スタートアップのマーケティング支援を行いながら、大企業の新規事業担当者に焦点を当てるインタビューメディア「新規事業Talks」を運営。


目次

FIC→ローンチパッド→ジー・サーチへ。「ステージゲート」が意思決定を前に進めた

KOEの事業フェーズの変遷

堀井: まず、FICに応募してからKOEをどのようなプロセスで育ててきたのか、全体像を教えてください。

蓮井: はい。最初はFujitsu Innovation Circuit(FIC)に応募しました。FICは「挑戦が当たり前の富士通」を掲げて、起業家マインドとスキルを持った人材育成と事業創出を目指すプログラムです。
半年間は100%専任で事業創出に集中でき、事業投資に値するかどうか判断されます。

最初の半年でアイデアの芽が見えたので次のフェーズへ進みました。ただ、ここも簡単ではなくて、ボードメンバーにプレゼンして通過する必要がありました。

その後、2022年7月に設立されたベンチャースタジオ
株式会社富士通ローンチパッド
https://flp.studio/

にて事業検証を行いました。

ここは3ヶ月ごとにステージゲートがあり、投資に値する事業・チームかが判断されます。一定基準をクリアできたので、さらに育てるフェーズへ移りました。

そして現在は、2025年10月から株式会社ジー・サーチへ異動し、本格展開しています。今は売上拡大に向けた販促と並行して、市場調査・検証も進めている状況です。

左:齋藤 悠希さま、右:蓮井 美希さま
左:齋藤 悠希さま、右:蓮井 美希さま

堀井: 0→1はプログラムの中で、その後は事業会社の中で伸ばしていく形ですね。

蓮井: そうですね。0→1はFICやローンチパッドの枠内で進め、以降は「事業部に戻すのか」「スピンアウトするのか」などの選択肢があります。私たちは最終的に、ジー・サーチ側で育てる判断をしました。

ただ正直、自分たちの意思で“産んだ”というより、プログラムのフェーズに“乗った”部分もあります。とはいえ、定期的な審査や検証の仕組みがあることで、意思決定が前に進んだ面は大きいです。

V1→V2→V3。「捨てる決断」を“顧客の反応と数字”でやり切った

6ヶ月で2度のピボットを実施した説明画像
6ヶ月で2度のピボットの変遷

KOEの歩みを象徴するのが、蓮井さんのこの言葉でした。

蓮井: 実は、今のKOEはバージョン3(V3)なんです。

堀井: 初期から今の方向性(定性×行動観察)を狙っていたのでしょうか?

蓮井: いえ、最初からではないです。新規事業開発って調査をたくさんすると思うんですが、私たち自身、調査すること自体が初めてに近い状態でした。
その中で、仮説課題を立てて、誰に聞くべきか、調査設計して、分析して…という一連の流れのどこが一番詰まっているのか、どこなら解決できそうか、というところから始めました。

途中はかなり紆余曲折があって、富士通の技術を活かして感情分析や表情から本音を読み解くといった方向も検討しました。ただ「技術的に難しい」「局所的」といった理由もあり、少しずつ方向を変えていきました。
大きくは2回くらいピボットしています。

堀井: V3を選んだ決め手は何だったんですか?

蓮井 美希さま
蓮井 美希さま

蓮井:課題探索インタビューの結果をもとにコンセプト案をいくつか作っていったのですが、 どの案もFigmaでモックを作り、実際の顧客に当てて検証していました。点数をつけて評価していたのですが、V3が明らかに反応が良かったんです。コメントの内容でも差が出ました。

チーム内には「V2でやりたい」という気持ちもあったんですけど、点数の差が大きかったので、そこは意思決定しました。

それと、V1からずっと見てくれていたお客さんにV3を持っていったときに、
「V2はちょっと心配だったけど、めちゃくちゃ良いプロダクトになりましたね」
とさらっと言われて、これで大丈夫なんだと背中を押されました。

堀井: 感情と定量がずれたとき、判断に迷うことはなかったですか?

蓮井: 迷っているときは、どっちも走らせることが多いです。施策レベルで検証を回して、まだ目があると思ったら続ける。本当にダメだなと思ったら捨てます。白黒つくまでやるイメージですね。
組織的な判断が強く出ない分、オーナーシップを持てているのは特権だと思います。

齋藤 悠希さま
齋藤 悠希さま

齋藤: 売り方やマーケの型も、何が一番ハマるか分からないので、三案同時に走らせるようにしています。
うまくいった1つを次のクォーターで深め、残りは「なぜ相性が悪かったか」を結論づけて次へ進みます。
それと、3ヶ月に1回必ず振り返って、次の3ヶ月の打ち手を決めるのをルールにしています。周りから見ると順調に見えるかもしれませんが、試行錯誤はずっとしています(笑)。

KOEの本質は「次の一手を早く打つ」

セルフ動画型リサーチ「KnockOnExploration」の説明画像
セルフ動画型リサーチ「KnockOnExploration」について

“動画”で行動観察を届け、解釈の負荷をどう下げるか

堀井: KOEのサービス概要を改めて教えてください。

蓮井: KOEは動画を活用したコンシューマーリサーチツールです。生活者のリアルな生活実態をクイックに収集し、低コスト・短期間で定性調査を実現します。
一番のポイントは、定性情報を手軽に扱えることです。従来の定性調査は予算も時間もかかり、調査スキルも必要でした。KOEはユーザーの自撮り動画を活用し、1週間でリアルな様子を届けます。

一方で、動画は情報量が多い分、見切る・読み解く負荷が高いという声もあります。そこで現在、動画の見どころ抽出やインサイト整理を支援するAI機能を開発しており、2026年1月からβ版の提供を開始しています。
“動画を集めて終わり”ではなく、次の一手を早く打てる状態につなげていくことを目指しています。

既存の定性調査との違いを説明した画像
既存の定性調査との違い

堀井: 既存の調査サービスとの差はどこにありますか?

齋藤: 一番大きいのは、行動観察ができることだと思っています。インタビューは発言を深掘りしますが、KOEは発言+行動の両方を見られます。
人は「言っていること」と「無意識の行動」がズレることがあります。KOEでは、そのズレも含めて動画というファクトで確認できる。ここが、既存の調査手法と比べたときの違いだと思います。
そして今後、その“見切る・読み解く負荷”を下げるために、AIでインサイト抽出を支援する機能を強化していきたいと考えています(※現時点では開発中です)。

KOEで撮影される動画サンプル
洗顔シートの動画サンプル

蓮井:例えば、某メーカーの洗顔専用ティッシュを使うシーンでも、使い方には差が出ます。
2〜3枚取ってゴシゴシ拭くAさんと、1枚を丁寧に広げて押し当てるように拭くBさんがいました。

このとき、Aさんは「価格が高い」と評価し、Bさんは「品質を考えれば妥当」とコメントしています。

アンケートで「価格が高い」という結果だけを見ると、「価格を下げるべきだ」という判断になるかもしれません。
でもプロダクトオーナーとして本当に知りたいのは、「なぜ高いと感じるのか」なんです。

本人自身も、自分の使い方に気づいていないことがあります。つまり、無意識の行動なんですよね。
だからこそ、そうした行動の違いまで読み取れる、動画解釈を支える仕組みを作りたいと思っています。将来的にはAIの力も活用しながら、解釈の精度を高めていきたいです。

価格・スピードも意思決定に直結している

蓮井: いまは、10人分の動画収集でショット20万円からです(1人あたり2万円)。調査期間は1週間で完了します。途中にスクリーニング調査も挟みます。
パネルは外部のアンケートモニターのパネルプール(約3,000万人)と連携していて、条件を入力するとスクリーニングされて対象者が調査先になります。

「面積問題」——課題は深いが、ボリュームが狭いかもしれない

蓮井: 一部のお客様には使っていただいているものの、市場全体に完全に受け入れられているかというと、まだそこまでは至っていないと感じています。
何か一つ、足りないパーツがある。その感覚はかなり明確です。

一つは、「動画は情報量が多くて解釈が難しい」という声です。
ここは、私たちが突破口になると信じているポイントで、現在は動画の示唆整理や解釈を支援する仕組みの開発にも取り組んでいます(※現時点では開発中です)。

もう一つは、ターゲットの広さです。
意思決定を高速に回したいプロダクトオーナーは、体感としては全体の1%くらいかもしれません。
残りの多くの方は、調査会社に任せる前提で動いているケースも多い。
私たちが向き合っている課題は確かに深いけれど、事業としての“面積”はまだ十分ではないと感じています。

新規事業は一直線に前に進むものだと思っていましたが、実際には、
一歩進んで、壁にぶつかり、少し戻って問い直す。
その繰り返しなのだと、今は捉えています。

齋藤:だからこそ今は、改めてプレイヤーを洗い出して、
「誰が」「どこで」「何に詰まっているのか」をもう一度見直そうとしています。

KOEは動画を肝にしたサービスです。
動画だからこそ見えるものもあれば、動画だからこそつまずく点もある。
そこから目を逸らさずに、「動画でなければ意味がない理由」を一つずつクリアしていきたいと思っています。

もし「動画じゃなくていいよね」という結論になるのであれば、それはKOEである必要がない。
そうならないために、まだ試行錯誤を続けていく段階だと思っています。


全国の新規事業担当者へ|「1秒でも早く顧客にぶつける」「自社の武器に気づく」

最後に、お二人から新規事業担当者へメッセージをいただきました。

齋藤: とにかく顧客にぶつけるのを早く。1日でも待たずに、1秒でも早くアポを取ってぶつけることが大事だと思います。
無償PoCだと付き合ってくれるけど、有償になると距離が離れることもあります。だからこそ、MVPでもいいのでリアルな形で早くぶつける。評価が返ってくると会社も動いてくれると思います。

蓮井:
大企業に限った話かもしれませんが、外から見ると、自分たちが持っている“武器”は意外と多いものです。
例えば、富士通という看板が生み出す情報の安心感や信頼性も、その一つです。

狙っている市場で、先行企業や競合が強く打ち出している価値の中に、実は自分たちにとっては当たり前になっている強みが隠れていることもあります。
そこに大きなヒントがあるので、ぜひ一度、自社の強みに改めて目を向けてみていただけると良いと思います。


KnockOnExplorationについて詳しく知りたい方へ

セルフ動画型リサーチ「KnockOnExploration(KOE)」 は、
生活者のリアルな行動を、短期間・低コストで捉えるリサーチサービスです。

-サービスサイト
https://koe-research.g-search.jp/

-サービス資料ダウンロード
https://solution-info.g-search.jp/lp/koe/documents

-導入事例・活用事例
https://koe-research.g-search.jp/usecase/

「定性調査をもっと早く回したい」
「ユーザーの“実際の使い方”を見たい」
そんな課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご覧ください。

ジーサーチ様のアイキャッチ画像

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