コニカミノルタ株式会社コニカミノルタの新規事業開発を支える、バンドマン出身の「新規事業立ち上げ屋」宮木さんに聞く

宮木 俊明(みやき としあき)
コニカミノルタ株式会社 ビジネス開発部長/グロースワークス合同会社代表 /ビジネスモデルイノベーション協会代表理事
音楽活動、商社、スタートアップの創業代表、教育ITベンチャーの事業責任者等を経て現職。新規事業・人材開発・組織開発の「三位一体開発」によるイノベーションの創出を、実践者、支援者、育成者など様々な立場で推進中。2冊の著者の他、NoteやYoutubeを活用した発信にも力を入れている。
※本インタビューは、Vlag yokohama(https://vlag.yokohama/)にて、撮影のご協力をいただき実施しております
「ブランド力」を活かした新規事業開発
コニカミノルタが新規事業に注力している分野を教えてください
当社では、さまざまな領域で新規事業の開発に取り組んでいます。まず、公式に「成長の芽」として発表しているものには、「再生プラスチック」「ペロブスカイト太陽電池」「バイオものづくり」といった分野での事業創出の取り組みがあります。
※https://img-insight.konicaminolta.com/blog/435/
その他、たとえば、オフィス用の複合機の提供から始まった主力事業である「デジタルワークプレイス事業」の領域では、「オフィス環境」「業務まわり」を包括的に支援するソリューションを開発しています。業務効率だけでなく“働く環境そのもの”を改善するため、家具メーカーと協業してオフィスレイアウト全体を一括で手掛けるような取り組みもあります。
また、近年はICT教育(デジタル技術を活用した教育手法)が普及していることから、授業で利用されるソリューションの開発にも力を入れています。その一つが「ラーニングマネジメントシステム(LMS)」で、そこにAIを搭載したところ多方面から注目をいただきました。
その結果、東京都が全校・全生徒にAIに触れられる環境を整備するプロジェクトにも参画させていただくことになりました。
これまでに培ってきた技術をベースに、さらにプラスαの付加価値を加えながら、幅広く挑戦しているイメージです。
コニカミノルタとして、新規事業開発は既存アセットを活用した取り組みが中心なのでしょうか?それとも“飛び地”のチャレンジも推奨しているのでしょうか?
数年前までは、戦略的に「飛び地領域にも積極的に挑戦する」「チャレンジングな投資を行う」「新領域のスタートアップの買収も進める」といった、大胆なアプローチをとっていました。
その一環として、世界五極(北米/欧州/アジア・パシフィック/中国/日本)にBusiness Innovation Center(BIC)を設立し、新規事業の立ち上げや投資判断、スタートアップとの協業、大学やベンチャーキャピタルとの連携など、多様な取り組みを推進。実際に数多くの新規事業が生み出され、資本業務提携や買収なども含め、グローバル規模でのチャレンジを積み重ねてきました。
そしてここ数年は、そこで得られたシーズや知見、ネットワークを、技術開発本部に統合し、新規事業開発や事業部運営に生かされる形になっています。その中で、「どこまでを自社のコアとして育てるか」という観点で選択と集中を進めた結果、いくつかの事業は切り離す判断も行われました。
現在の新規事業開発は、そうした経験を踏まえつつ、事業部発の取り組みや既存アセットとのシナジーをより重視した、実装志向・現場密着型のアプローチへとより骨太に進化しているフェーズだと捉えています。
会社として求められているのは、事業の柱となる、例えば100億クラスの規模なのでしょうか?
そうですね。数億〜数十億規模の事業が否定されているわけではありませんが、やはり既存事業とのシナジーや「一定の規模感」を求められる傾向はあると思います。
コニカミノルタにおける新規事業の強みは何だと思いますか?
コニカミノルタの強みのひとつは、寛容な文化だと思います。もちろん既存事業との調整や予算面での検討は必要ですが、「やりたいことをまず始めてみる」という点に関しては、比較的ハードルが低いと感じています。
また、社内には多様な専門性を持ったスペシャリストが揃っており、相談すれば丁寧に応えてくれる“人の良さ”も大きな強みです。そうした支えがあるからこそ、挑戦しやすい環境になっていると思います。
さらに、コニカミノルタは世界中にお客様を持ち、実際に売上全体の約8割グローバル企業です。うまくフィットすれば一気にグローバル展開まで視野に入れられる点も、新規事業にとって大きなチャンスになります。
特に欧州を始めとした様々な国や地域で高いシェアを持っており、このブランド力を生かした事業づくりができれば、さらに可能性が広がると考えています。
「企業アセット」を活用した新規事業開発
宮木さんの所属部署と、与えられているミッションを教えてください。

私は、プロフェッショナルプリント事業本部の商品企画統括部に所属しており、その中の「ビジネス開発部」で部長を務めています。ビジネス開発部は、文字どおり“新しい事業をつくる”ことをミッションとしており、私自身も新規事業開発をリードする役割を担っています。入社して丸4年が経過した所になります。
プロフェッショナルプリント事業本部は、簡単に言えば“プロが使うデジタル印刷機”を扱う部門です。印刷会社に使っていただくケースが最も多いのですが、一般企業でも「印刷専門チーム」を持ち、取扱説明書や販促物を自社で制作することがあります。また、大学や企業が教材などを大量に印刷するケースもあります。
こういったプロユースの場面では、一般的な複合機だと生産性が追いつかずオーバーフローしてしまったり、印刷メディア(紙種など)への対応が不十分であったり、求められる印刷品質に達しなかったりします。そのため、専用の高性能印刷機が必要になります。私が所属する部門では、こうした“プロ仕様”の印刷機を世界中の企業に販売しており、これらのアセットを活かした新規事業の開発をミッションとしています。
会社から求められているのは「数」をつくることと、「ひとつ大きな事業をつくること」のどちらになりますか?
特にどちらかに制限があるわけではなく、上層部から明確に課されているものもありません。現在は大きく2つのテーマを掲げており、それぞれにチームを組成して取り組んでいる状況です。
宮木さんは「AccurioDX(アキュリオDX)※」の立ち上げにも関わられていますが、取り組みもミッションの一環と捉えてよろしいでしょうか ※デジタル印刷活用プラットフォーム構想

もちろんそうですね。AccurioDXは、デジタル印刷テクノロジーを活用した「パーソナライズ印刷」を軸に、デジタル印刷ならではの印刷を活用したコミュニケーションを簡単にご利用頂ける新規事業です。メンバーとともに、私がファウンダーとして立ち上げました。ECでの商品発送時に同梱するチラシのパーソナライズや、郵送DMをパーソナライズする取り組みを通じて、営業やマーケティングに関わる皆様の「一人ひとりに最適なメッセージを届けたい」という想いを実現しています。
更に、現在もうひとつ管掌している取り組みが「EX感性」という脳科学の知見を活用したデザイン評価を基軸としたマーケティングソリューションです。
ここでは、画像や動画データをソフトウェアにアップロードするだけで、人がその対象物を見た際にどのような印象を受けるかを言語化したり、視線の流れや“どこが最も目立つか”といった情報を数値化したりできるツールを提供することで、「感性の見える化」を実現しています。
これまで、主に商品パッケージ開発で活用されており、
・従来のブランドイメージに近づけたいのか、離したいのか
・どこに視線を誘導したいのか
・どの様な印象を与えたいのか
といった“見え方”を客観的に評価することができます。
従来はどうしても人の主観が入りがちな部分でしたが、それを科学的に判定できるのが大きな特徴です。

これは社内アセットを活用したケースでしょうか?
EX感性は、広島大学との連携のもと、社内の「技術戦略本部」で開発された技術がベースになっています。
技術戦略本部は、将来の事業部門で活用できる先端技術を研究・開発する組織で、そこで生まれた技術と事業開発テーマが事業部側に移管され、事業化につながったという経緯です。
感性脳工学の知見をアルゴリズム化し、人の感性をロジックとして処理できるようにした点が特徴です。
実際の活用事例として、サントリー「トリプル生」やロッテ「ミルクチョコレート」の新商品開発など、パッケージデザイン領域での事例の他、ショッピングモール等の店舗開発や、ホームページ、プレゼン資料、メニュー表などでの利用事例もあります。
「既存事業」との共存
宮木さんは中途入社で入られましたが、新規事業開発を推進するにあたって、普段意識されていることを教えてください。
私が入社したのは4年前(2021年)で、いわゆる“大企業”に入るのは実は初めてでした。これまでは外部の立場から大企業と接していましたし、大企業で新規事業を担当している友人の話も聞いていたので、「相当大変な世界だろうな」とかなり覚悟して入社しました(笑)。
実際に働いてみると、思っていた以上にやりやすく、コニカミノルタの“人と文化”に助けられている部分は大きいですね。ただ、既存事業と新規事業ではロジックが違う箇所がどうしてもあり、人やプロダクトに対する評価軸や承認プロセスが“既存事業と同じものが適用される”ケースもあります。そのギャップを理解した上で、組織のルールとうまくフィットさせていきつつ、慣習や常識を疑い続けることは常に意識しています。
人やチームに関して言えば、入社当初はメンバーが4名ほどで、それぞれが別のテーマを推進しており、お互いが何をやっているのか把握できない“個業状態”でした。コロナ禍という背景もありましたが、やるべきことは多いのにチームとしての連動性が弱かったので、まずはそこを“ひとつのチーム”として融合させることに注力しました。
違和感なく入れたのは、コニカミノルタのカルチャーも大きかったでしょうか?
そうですね。大きな業態の転換や合併なども経験していることから、変革のDNAは刻まれているのだと思います。その上、もちろん部門ごとに力学や文化はさまざまですが、私の場合は特に上司にもメンバーにも恵まれたことが大きかったと思います。入社にあたっては、上司はもちろん当時の担当役員とも面接や入社前のミーティングなども経て相互理解を深めて頂いたのですが、事前に私の人となりやスタイルを理解していただいていたこともあり、スムーズに立ち上がることができました。
バンドマンから始まった異色の経歴
ここからは宮木さん個人について教えてください。これまでさまざまな企業や個人として新規事業に関わってこられましたが、そのきっかけは何だったのでしょうか?
「自分で新しい価値をつくり、それをお金に変える」という意味では、最初の経験はバンドでCDやグッズを売っていた頃ですね。高校時代から28歳くらいまでバンド活動を続けていて、私はドラム担当でした。自分で曲を作り、仲間と仕上げてレコーディングし、そのCDを販売したり、ライブを開催したり。完全に“赤字”でしたけど(笑)、それが初めて“自分の創った価値がキャッシュになる”経験でした。
ビジネスパーソンとしてのキャリアはどのタイミングでスタートしたのでしょうか?
バンド活動と並行して、葬儀会社で5年ほど働いていました。シフト制だったので、「この日はライブなので休みます」と事前にスケジュールを組んで活動していましたね。その後、バンドに専念した時期もありましたが、実態としては“住所不定無職”に近く、貯金や退職金を切り崩しながら活動していました。ただ、なかなか芽が出ず、最終的には断念しました。
その後、転職活動をして、とある専門商社に拾っていただきました。製薬会社や大学の研究者向けに、実験や新薬開発で使う特殊な化学物質を提案したり、化合物ライブラリーを輸入販売している会社です。29歳になる直前で、ここで初めてビジネスの世界に足を踏み入れました。
そこから「新規事業」に関わるようになったきっかけは?

『仕事はかどり図鑑 今日からはじめる小さなDX』
最初はBtoBの営業としてスタートし、ありがたいことにトップセールスを4年ほど続けることができました。役割として、日本全国の製薬会社の研究所に訪問することが仕事だったのですが、どの研究所でも化合物や試薬の「調達」および「保管・管理」の分野で、ほぼ共通した課題を抱えていたんです。
例えば調達の部分では、当時の製薬会社では、化学物質を調達する際、問い合わせて、価格比較して、購入して…と非常に手間のかかる状態でした。書籍で例えると、出版社ごとに販売サイトがばらばらに存在するようなイメージです。そのため、購買部門や研究者が独自にデータベースを統合している様な状態だったんです。
この様な顧客課題に対するリアルな一次情報に基づき、「『化合物のAmazon』のような仕組みがあれば便利なのでは?」といったアイデアを起点に事業構想し、2014年にスタートアップを立ち上げました。自己資金に加えて、勤務していた商社含めた事業会社や個人からも出資をいただき、スピンオフのような形でのスタートでした。
3年ほど事業を続けて調達部分のプラットフォーム事業は挫折したのですが、保管管理の仕組みがある程度軌道に乗り、最終的になんとかイグジット。サービス自体は、今でも大手製薬企業にご活用頂いていますので、なんとかゼロイチが達成できたと考えています。その後、出資者の1人である商社の社長と相談の上、元の商社に戻り、製薬企業とのつながりを生かした営業支援を行っていました。
「読書会」から始まった学びの場作り
スタートアップでは、本業の他に、「読書会」から始まった学びの場作りも軌道に乗り、セミナーの開催や底から派生した研修の提供や新規事業開発コンサルティングも行っていました。この活動は商社に戻ってからも、営業支援の仕事と並行して、スタートアップ経験で得た学びや知見を「もっと多くの人に共有したい」という思いへとつながり、社内外から「新規事業について学びたい」というニーズに細々と答え続けていました。
この活動が広がっていく中で、自然と新規事業開発の支援にも深く関わるようになり、次第にワークショップのファシリテーションや研修講師、あるいはコンサルタントとして呼ばれる機会も増えていきました。これらが現在経営している「グロースワークス合同会社」の事業にも繋がっています。
現在は社内のアセットを活かしつつ、宮木さんご自身のスタンスで新規事業開発を進めているんですね。
はい。「営業担当兼・新規事業屋」という働き方を、ずっと続けている感覚があります。バンドマン時代も、捉えようによっては新規事業のようなものですしね。実は葬儀会社にいた頃にも新規事業を提案していたのですが、当時はすべて“蹴られました”けどね(笑)。
相手の目線に合わせて会話をしよう
新規事業を進めるうえで、社内外の「巻き込み」は不可欠ですが、普段どのようなことを意識されていますか?
仲間集めについては、実体験も研究も重ねてきたので、ある程度“極意”のようなものを自分なりに持っています。そのベースになっているのが、実はバンド経験なんです。
恵まれたケースを除いて、バンドマンが普段やっていることって、ほとんどが実は「メンバー集め」なんですよ。
活動が長く続かないことも多く、人生の節目で辞める人が出たり、生活態度に問題があったり、クビにしたり・されたり……。お互いにそんなことを繰り返す世界なので、“ずっと同じメンバーで続く”ことはむしろレアケースなんです。
だからこそ、常に「メンバー募集」をすることになるのですが、そこで必要なのがまずは“刺さる言葉”です。昔でいえば、楽器屋に貼るメンバー募集のチラシの文言をどう工夫するか。今で言うランディングページのリード獲得と同じで、ある意味マーケティングなんですよね。
口頭で誘う時も同じです。「やりたいから集まって!」と言っても、誰も動かないことがある。
大事なのは、まず相手が何を求めているのかを理解することなんです。
最終的に仲間になってくれるかどうかは、「お互いのありたい姿をどれだけわかり合えるか」にかかっていると感じています。
つまり「相手の視点に合わせて会話する」ことが重要ということですね。
そうですね。オープンイノベーションがうまくいかない典型例は、双方が「やらされている状態」になっているケースです。やらされる側も、やらせる側も、どちらもよくありません。まずやらせてはいけないんです。
私は、立場上は上司ですが、メンバーには「この人に許可を求めたら負けだ」と思われている節があります(笑)。
それくらいでちょうどよくて、「これ、やっときますね」とか「〇〇やってみたらこんな事がわかりました」くらいの自主性のほうが、圧倒的にうまくいくんですよ。
「複業」がコンテンツを無限造成させてくれる
宮木さんは複数の領域で活動されていますが、それらは新規事業開発にも影響していますか?
非常に大きな影響があります。
まず、新規事業開発担当者にとって大きな武器になるのが、自分で価値をつくり、それをお金に変える一連のプロセスを“一次情報”として持っていることだと考えています。お客様がいて、そこに価値を提供できるかどうかを、自分の手で確かめられる経験はとても大切です。
ただ、大企業に所属していると組織が細かく分業されているため、仮に一通り経験したとしても、どうしても“断片的な知識”になりがちなんですよね。
私の場合は、バンドマン時代から現在に至るまで、自分で価値を生み、届け、対価を得るという流れをハンドリングしてきた経験が強みになっています。
現在は「コニカミノルタ」「自分の会社(グロースワークス合同会社)」「ビジネスモデルイノベーション協会(代表理事)」の3つの立場で活動していますが、意識の上では誰かに会うときにそれらを切り分けて考えることはあまりありません。
それぞれの視点から価値を提供できるため、切り分けないほうが結果的にチャンスの幅が広がっている実感があります。
また、私は過去の蓄積を“教えるだけ”ではなく、コニカミノルタで実際に現在進行系で新規事業をやっているからこそ、外での講義や研修にリアルかつリアルタイムな知見を持ち込めます。
そこで得た気づきやノウハウをグロースワークスの研修コンテンツに反映したり、それをビジネスモデルイノベーション協会で活用事例として共有し、そのフィードバックをまたコニカミノルタに戻して改善しつつ継続実践する。そんな好循環が生まれています。
1社だけで閉じてしまうと知見はそこで止まりますが、「外で磨かれる場」があることで、一つの経験の深みが変わり、精度がどんどん高まっていく感覚がありますね。
新規事業開発担当者は“変態”たれ
新規事業開発担当者に向けたメッセージをお願いします。
私がよくお伝えしているのは、「新規事業開発担当者は“変態”たれ」ということです。
人の働き方のタイプには、大きく分けて「成果志向」と「成長志向」があると言われます。どちらも重要なのはいうまでもありませんが、実は新規事業開発で成功しやすいのは、「成長志向」の方なのです。
私が定義する“変態”とは、「リターンではなく、自分の興味関心、使命感、大義等を行動原理とする感性と実行力を持ち、できない理由を並べず「どうしたら少しでも前に進むか」という観点で実働しながら、必要なリソースを自ら集めることを厭わず、これらの”プロセスそのものに快感を覚えている人”」のことです。
スタートアップを経験していない人からすると、スタートアップとは「大きなリターンを狙って動いている」だけだと誤解されることもあるかもしれません。しかし実際には、ちょっとした違和感や素朴な疑問、あるいは社会課題への問題意識が出発点であることがほとんどだと感じます。
成果がすぐに出なくても続けられるかどうか。その途中の小さな変化を捉え、成長を実感し、プロセスそのものを好きでいられるか。
外から見れば少し“奇異”に映るかもしれませんが(笑)、それこそが「変態的」な状態であり、新規事業に携わる人に欠かせない姿勢だと考えています。
仲間集めの極意とも通じますが、自分自身が変化し続け、プロセスを楽しめなければ、新しいものは生まれません。
そもそも“変態”は生物学では、昆虫が自らの姿を大きく変えていくプロセスを意味します。そのくらいの変化を厭わない姿勢が、新規事業には本質的に求められるのだと思います。
今後のビジョンやテーマを教えてください。
コニカミノルタを通じて実現したいのは、まず「ボトムアップでの新規事業開発の営みを通じて、人と組織を変革できる」という実例をつくることです。
企業全体に大掛かりな仕掛けがなくても、現場の意思と工夫で事業を立ち上げていけることを証明したい。そのプロセスで蓄積されるチームづくりやノウハウを体系化し、再現性のある新規事業から始める組織変革のメソッドとして形にするのが目標です。
私は「日本の企業をもっともっと元気にするために」コニカミノルタに入りました。その思いは今も変わっていませんし、必ず実現したいと思っています。
グロースワークスについては、偶然ですがクライアントに大企業も多く、こちらでも実践と支援が同時並行で進んでいます。事例を提供することで自分自身の学びにもつながり、好循環が生まれています。
また、中小企業の多くは大企業との取引で成り立っている構造があるため、大企業が変わることのインパクトは非常に大きいと感じています。
ビジネスモデルイノベーション協会では、現場のリアルな経験をメソッドに還元し続け、会員の皆さんが新規事業に取り組みやすい環境づくりを進めたいですね。
そして当事者として強く思うのは、
「新しいことに挑戦する人が疎外されない社会にしたい」ということです。
属性だけ見れば、私は「40代男性・都内近郊在住・大企業勤務・妻子持ち」という“マジョリティ”に属しますが、保守的な人に囲まれながらいつも新しいことを始める異質な存在だった自覚があるので、その意味では常に“マイノリティ”側にいます。
過去には、「よく分からないことを言うやつ」という扱いを受けた経験も沢山ありました。今でもその特性は継続していると思います。
その中で、新しいアイデアの受け止められ方、伝わらなさの悔しさを嫌というほど味わってきました。これは今でもあります。
AccurioDXに取り組んだ背景にもありますし、EX感性の価値にもつながるのですが、私はずっと「伝わらなさを撲滅したい」と思っています。
新しいことを始めようとする人を含め、人の想いの“伝わらなさ”をなくし、挑戦や想いの価値が正しく評価される環境をつくり続けたい。これらの営みを通じて、人の存在そのものや人の想いや価値観がもっと大切に扱われる世界を実現したい。それが人生のテーマなのかも知れません。
